オートポイエーシス(Autopoiesis)
オートポイエーシスとは、auto(自己)poiesis(制作)つまり境界を自ら作り出すことにより、その都度自己を制作するという考えです。オートポイエーシスの概念は、チリの神経生理学者U・マトゥラーナとF・ヴァレラの共著論文「オートポイエーシス−生命の有機構成−」(1973年)ではじめて提起されました。その論理は神経システムをモデルにして組み立てられ、細胞システムや免疫システムに拡大していった理論構想です。例えば、私たちの体内に無数に存在する細胞は、外部環境の影響を受けつつも絶えず新陳代謝を行ない、その都度新しい細胞に生まれ変わっていく。この時、細胞がどのように変化したのかを見届けるのはシステムそのものではなく、私たち外部の観察者です。
だがしかし外部の観察者の視点から捉えられた既存の生命システム論と異なり、オートポイエーシス論はシステムそのものの視点からシステムを捉えることによって、システムの境界、作動の意味を根本的に変えてしまいました。いまだ形成途上の理論ですが、社会学、脳神経生理学、法社会学、精神医学など多様な分野で応用、研究されています。
ところでなぜ、甲ゼミでオートポイエーシスを扱うのか?ゼミのテーマとは、一見無関係のように思える方も多くいるかもしれません。オートポイエーシスはドイツの社会学者N・ルーマンによって社会学の分野に応用されるようになります。伝統的な考え方では、社会的な出来事は、人間が社会的なものの最小の単位をなしており、社会システムは人間とその社会的諸関係からなっている、というものです。同様にコミュニケーションも、人間がコミュニケートする、あるいは多数の人間が互いにコミュニケートする、という考え方が用いられてきました。だがルーマンによれば、社会的なものは人間からなっているのではなく、コミュニケーションからなっているとされ、人間は社会システムの環境の中に現れるに過ぎないとされるのです。これはどういう事なのでしょうか?
もう一度、細胞システムの例に戻って考えてみましょう。細胞は不断に新陳代謝を行ないながら、新たな細胞を自ら(auto)製作(poiesis)しています。この際、外部環境の影響を受けることなしに新陳代謝を行なうことはできませんが、外部環境は細胞システムにとってあくまで環境でありつづけ、直接システムの中に入り込むことはできないのです。
コミュニケーションの場合で考えてみましょう。コミュニケーションは、ある情報が伝達されることで相手に理解される、という過程を含んだ一連の行為を指すものですが、そこで次の例を考えてみましょう。『あなたは友達と会話をしている最中に、話の内容が退屈になったのか、週末の予定を考え始めました。』その様な状況において、コミュニケーションに参加している意識システムが直接コミュニケーションのなかに入ってくれば、お互いにとって極めて不愉快なことになるでしょう。意識システムはコミュニケーションが行なわれている間にも思考するが、この思考の伝達はしないのです。
いかなるオートポイエーシス的システムも自分の境界の外ではたらくことはできない。
『コミュニケーションだけがコミュニケートできる』という彼の主張は、私たちのコミュニケーションに対する考え方を見直す契機となりました。

スマートハウス(Smarthouse)
人の室内での快適な環境を実現するために、コンピュータ技術を組み込んだ家。センサーなど様々な方法で家の内部にいる人や環境の状態を把握し、その場面にあった情報・サービスを提供します。例えば、部屋の温度・湿度を感知し、使用者に最適な部屋の状態を分析した上で、自動的に温度調節が行なわれるなど。
研究例としては、Aware Home (ジョージアテック)、House_n (MIT)などがある。
このうちHouse_nはゼミの輪講でも取り扱っているので、スマートハウスに関する輪講の一部を見てみたい方は、こちらを参照ください。
輪講で使ったプリントが載っています。甲ゼミでは、心地よい生活空間を実現するための1つの手段として、このスマートハウスの分野に建築・情報技術の両面から注目しています。

ヒューマンインターフェース(Human Interface)
機械技術がめざましく進歩し、誰もが日常的に機械に接し、利用するようになった現代において、分かりやすく言えば、機械をより使いやすくするためにはどうしたらいいかということです。インターフェイス(Interface)という言葉は「界面(接面)」と訳すことができます。界面(接面)とは、2つの異なる性質のものが接する部分のことを指します。ヒューマンインターフェイス(Human
Interface)とは、『「コンピュータを含めた機械」と「人間」が接する部分』のことをいいます。
人間が機械を使って対象を変化させるとき、「人間と機械の接面(第1接面)」と「機械と対象の接面(第2接面)」という2つの接面が生じます。ヒューマンインターフェイスは、この2つの接面のうち、第1接面のことを指しています。例えばパソコンで言うと、画面、ソフトウェア、またはキーボード、マウスなどの入力装置も含まれます。ヒューマンインターフェイスの目的としては、私達が機械を使う目的は、機械を操作すること自体にあるのではなく、機械を使って実世界の対象物を変化させることにあります。つまり、本来、機械の介在を意識しないで操作できることが望ましいといえます。
しかし現状では「人間の作業」と「対象の変化」の間に「機械による処理」が入ることは、人間の直感的な操作を妨げています。機械が間に入ることによって生じる分かりにくさを無くしていこうとするのが、ヒューマンインターフェイスの最も重要な目的といえます。甲ゼミではこのヒューマンインターフェイスについて、機械のインターフェイスを考えるだけでなく、人のインターフェイスについても研究しています。つまり、機械を扱うときの人間の認知や心理なども含めて、ヒューマンインターフェイスについて研究しています。詳しくは、春セメスター木曜日3限に甲先生、自ら講義をしていますので、そちらまで・・・。

ユーザビリティ(Usability)
ユーザビリティとは、一言で言うと『つかいやすさ』のこと。 詳しくいうと『使いにくさがどれだけ小さいか』をあらわす言葉です。
しかし、何が使いにくいかということはその製品や、使う人によって変わってしまうので『使いやすさ』を定義するのは大変難しいといわれています。
現在はさまざまなユーザビリティの定義がありますが、有名なものは『ISO9241−11』において定義されたもの、Jakob Nielsen著書の『ユーザビリティエンジニアリング』の中で定義されたものなどがあります。
昨年の甲ゼミでは、ユーザビリティについて文献を読むことはもちろん、実際に私たちが使っているもの(椅子、電子機器、シラバスなど)を使って使いやすさの実験なども行いました。また、SG活動として『ユーザビリティSG』の中にはWebの使いやすさを考える『Webユーザビリティ』も活動中です。

ユニバーサルデザイン(Universal Design)
ユニバーサルデザインとは、年齢、能力、性別などに関わりなく、すべての人にとって使いやすく設計されたデザインのことです。「ユニバーサルデザイン(Universal
Design)」という用語は、1990年にアメリカのロン・メイスによって新しく作り出されました。
次に、ロン・メイスが規定したユニバーサルデザインの原則を紹介します。彼は、この原則を、環境や製品、コミュニケーションを含めて幅広く規定し、デザインの指針としてこれを確立しようと努力しました。
1. 誰にでも使用でき入手可能(公平性)
2. 柔軟に使用できる(自由度)
3. 使い方が容易にわかる(単純性)
4. 使い手に必要な情報が容易にわかる(わかりやすさ)
5. 間違えても重大な結果にならない(安全性)
6. 少ない労力で効率的に、楽に使える(省体力)
7. アプローチし、使用するのに適切な広さがある(スペースの確保)

仮想境界面
例えば、あなたが砂漠にいるとして…サボテンを発見します。しかし、このサボテンはあまりにも離れていて、2本のサボテンのトゲがお互いに呼応しているというイメージに至るはずもなく、この2本のサボテンの間には何の相互作用もありません。
ここで2本のサボテンがある程度の距離まで近づいたとすると、両者が作用し関係性が生まれます。
サボテンの間って、なんとなく通りたくないでしょ? 痛そうでしょ?(ちなみにこれは「(視覚的)障りの感覚」の一種です。)
これは、サボテンのトゲそのものが持っている視覚的刺激(痛そうなかんじ)が周囲に影響し、その力がもうひとつのサボテンに届いている、という現象がお互いのサボテンによって起こるからです。
さて、もしこれが、たくさん並んでいたら…
サボテンのトゲがお互い編みこまれるように壁を作っているのがイメージできませんか?つまり、それぞれのサボテンにおいて起こっているのがイメージできるでしょう。数多くのサボテンを間隔を狭めて等間隔に並べると、壁のような連続性を感じさせます。このように実際には存在しないにも関わらず、イメージされる壁のような連続性を<仮想境界面>といいます。両側の襖のふちを拾って、<仮想境界面>が生まれ、私達は「道」を意識するのです。
建築にはこの仮想境界面が良くも悪くも様々な形で現れてきます。いつも、過ごしなれている建築を、この仮想境界面という視点から見てみましょう。いつもの空間がちょっと違って見えてきませんか?この視点はあなたに新しい建築の見方を提供するはずです。そしてこの<仮想境界面>という概念は、建築・空間・身体 の関係性を考えていくうえで、欠かせない概念なのです。
<仮想境界面> 矢萩喜従郎著 「空間 建築 身体」エクスナッジ より
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